2010年4月12日月曜日

ザ・フォール

とにかく映像が美しい。舞台となる世界各国の世界遺産、色鮮やかな衣装とその造形美。
めいっぱい引きで切り撮った抽象画のような砂漠と空の青、インドに実在するエッシャーの絵のような階段状の井戸Chand Baori、どのシーンも意図して絵画的な構図で映像化されておりアート作品の域に達している。
タイトル「ザ・フォール」にあるように、二つの落下が青年と少女を病院で引き合わせる。
撮影中の事故で下半身不随になり、主演の色男に愛する彼女を奪われた、スタントマンの青年ロイ。そしてオレンジの樹から落下し腕を骨折した5歳の少女アレクサンドリア。
絶望の中、何とかして自殺を試みようとするロイは、空想物語でアレクサンドリアを惹きつけ、彼女に院内の薬を盗ませようとする。彼のでたらめなお伽噺に少女の無限大のイマジネーションが重ねられ美しく幻想的な世界が映し出されていく。登場人物は全て病院の中にいる大人達であり、現実と空想の配役の妙とそれらが交互に展開する複雑な物語構成がパズル的な要素ともなり最後までテンションを保ち続ける。加えて、すきっぱのぽっちゃりしたどこにでもいるような女の子が実に無邪気でかわいらしく、美しい空想世界をより強調する。
終盤、二つの「落ちる」にもう一つの「落ちる」が重ねられる。ロイはアレクサンドリアへの罪悪感と人生の虚無感から、次々と空想世界の登場人物を殺し、物語をうち消そうとする。その時少女が叫ぶのは、空想世界だけでなく現実の彼に向けられた生きる言葉。
2010.4.10★3.5

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