2010年1月20日水曜日

ひぐらしのなく頃に

同人系サウンドノベルがもとになっているキャラ萌え猟奇殺人ミステリーもの。オタク的なにおいが強いので少し敬遠気味だったけど「正解率1%」のキャッチフレーズに惹かれてしまった。ゲームでは幾つかの視点で描かれた話が重なり合い謎を深めるような構造をとっているらしいがこの映画はシンプルな一本道。
舞台は閉鎖された山里の小さな村。そこへ東京から画家の父親を持つ一人の少年が移り住んでくる。都会では学校生活になじめなかった主人公だが、親切なクラスメイトのおかげもあって徐々にとけ込んでいく。しかし、村で起きる一件の殺人事件をきっかけに少年は村人全員が何かを隠していると疑いはじめる。その裏側にあるのは村人が奉る神様とそれにまつわる言い伝え、そして過去のダム建設に係る殺人事件。
まずこんな田舎の村の生徒がみんな垢抜けた都会的な美少女であることに違和感を覚える。そして意図的なキャスティングだろうが主人公のあまりの演技の下手さに恥ずかしくなる。
エンディングも何が何だかさっぱりわからない。正解があるのかないのかもわからない。カルとか殺人の追憶のような深さはない。


1.5 2010.1.10

題名のない子守唄

ニュー・シネマ・パラダイスのジュゼッペ・トルナトーレ監督作品。これは本当に素晴らしい映画。特に切ないエンディングシーンは感動的、心にずしっとくる。主人公がみせる表情、余韻を残す潔い幕の引き方、場面、構図、完璧。予定調和かもしれないけど美しいものは美しい。
物語は、ウクライナの売春を背景にミステリアスに構成されている。冒頭、ジャケットからは想像もできないぼかし全開のショッキングなシーンに始まり、いっさい説明がないまま、主人公の女性イレーナのイタリアでのストーリーがはじまる。所々に過去の壮絶な売春時代のシーンがカットインされ謎をちりばめながらも、徐々にイレーナの行動の意味を理解することとなる。
イレーナは、売春と里子を斡旋する極悪なシステムに組み込まれた女性。強制的に産まされた子どもは自動的に子どもを欲しがる親へ引き渡され、そして次の子どもを産むためにまた売春を強要される。イレーナは目を盗んで呪縛から逃亡することに成功するがその時感じたのは強い母性。最後に産んだ子どもにどうしても会いたくなり、何とか子どもの居場所を突きとめ、一家が住むマンションの向かいに部屋を借りる。存在を確認するだけでは足らず、もっと子どもに近づくために手を尽くしその家の家政婦になる。自分が本当の親であることをひた隠し、愛情を注ぐ。生まれつき自己防衛力が弱い子どもをスパルタ的に訓練するシーン、、いじめっ子にやり返す子どもを陰から見守るシーン、イレーナの演技は素晴らしい。
後半、物語は急展開する。ウクライナで拷問とも言える売春を強要した悪魔のような男が登場。その男はイレーナが逃げ出した際に持ち出した大金を奪い返しに来た。男は猶予を与えながらも彼女の周りから全てを奪うために、里親の女性を事故に見せかけ殺す。当然イレーナに殺人の容疑がかけられる。本当の母親になりたいイレーナの心境を考えると殺しの動機は十分。そして、イレーナは、男を殺し、埋める。
全てが明るみになり、イレーナは犯罪者として警察に捕まり、愛する子どもとの別離を余儀なくされる。そして、驚愕の真相を知る。この絶望の闇があるからこそ、刑期を終えたバス停でのシーンがふるえるほどに感動的。
この映画GEOには一本しか置いていない。ウォッチメン、何十本も入れてる場合じゃねーよ。

★4.5 2010.1.10

ハイランダー

近未来の退廃しきったニューヨークを舞台に繰り広げられるバイオレンスアクション。86年に公開された「ハイランダー/悪魔の戦士」をハリウッドがアニメ化したもの。
主人公は死ぬことができない2千年の時を生きる不死族の男。彼は2千年前に極悪非道の独裁者に愛する人を殺された。その独裁者もまた、死なない男。どの時代でも世界の支配者として君臨している。そして、主人公が愛した女性は、輪廻を繰り返す。二人の男の因縁の対決と時代時代で現れる女とのからみが物語の主軸になっている。
舞台は未知の殺傷性ウィルスが蔓延し荒廃しきった近未来のマンハッタン。市民権を持つ裕福な上流層の人間だけがワクチンを打つことを許され、それ以外の一般市民はウィルスの恐怖に怯えながら地下での生活を余儀なくされている。主人公は、賞金稼ぎとして暮らしている。懸賞金をもらい受けるためにシティにアクセスする最中、地下でワクチン奪取をたくらむ女(過去に愛した女の生まれ変わり)と出合い、ここでもまた二千年来の宿敵がシティの支配者となっていることを知る。主人公と女は、復讐と人類の生き残りをかけて巨大な塔への侵入を図る。
冒頭、北斗の拳に出てきそうな悪役を殺すシーンはなかなか格好良くてテンションが上がったけど、中盤以降、何かだれた。時折出てくる過去のシーンが唐突かつ中途半端(特に戦国時代のもの)で、これは1時間半の映画ではなく連続アニメにした方が良かった気がした。
ちなみに主人好の声は小栗旬(だから?)
★2.5 2010.1.10

チェンジリング

クリントイーストウッド映画はどれも評価が高く、特にこれはアマゾンのレビューなんかでも絶賛されている。それで期待しすぎたせいもあってか個人的には少々物足りなさが残った。エンディングではやはり親子の再会を期待してしまった。泣ける映画である必要はないけど、泣く準備してたのに泣けないとやっぱりがっかりする。だってむしろ脇役の親子の再会シーンの方が泣けたよ。エピローグで、字幕が「主人公は息子を一生探し続けた」ということを伝えてくるが、そのコメントはあえていらないと思う。
色々と考えてみる。死刑執行前日に犯人が言いたかったことは何だったのか。彼女に会って本当のことを伝えたくて手紙を出した。でも神に懺悔した後ではもう嘘をつけないと言ってしゃべることを拒否した。彼女の強さ、真っ直ぐな心だけが唯一世の中で信頼できるものだったので死を前に信じているものがなくなるのが怖かったんだと思う。
それから警察は少年の死体をどうして探し出せなかったのか。犯人が口を割らないだけでなくここにも警察の怠慢さと腐りきった体質があらわれていたのかもしれない。
腑に落ちないのは、嘘つき少年を引き取った女と裏側の警察の企みがはっきり描かれていないところ。アンジェリーナジョリーの演技は確かに迫力があるが、最近のトゥームレイダーとかウォンテッドのお色気ムンムンアクションばりばりのイメージが強すぎてしっくり来ない。何かあの唇で言われても。。。
17歳のカルテははまっていたのになぁ。

3.5 2010.1.17

2010年1月19日火曜日

ヘルボーイ ゴールデンアーミー

アメコミヒーローもの第2作目。この手のものでは、ニコラスケイジのゴーストライダーの次に格好悪い(あれはニコラスケイジが不細工だからなんだけど)。ストーリーの大枠は悪の容姿と正義の心を持つ男が世界の滅亡を企む地獄の軍団と戦うというよくある平々凡々で典型的なもの。アマゾンの評価がやたらと高いのにびっくり。確かに敵キャラの造形も凝っているし映像の迫力もなかなかだけど、どうも赤鬼のような主人公に違和感があるし、深みを感じなかった。それは後半うとうとしたからかもしれない。でも何も考えずにワクワクだけを求めて観たのに眠くなるんだからやっぱりその程度のものなんだろう。
同様のアメコミものにインクレディブル・ハルクがあるが、戦争の愚かさ、人体兵器を背景に上手く恋愛要素が絡んでおり、何より主演がエドワートノートンなので盛り上がった。あれでニコラスケイジが主演だったら評価は別だろう。終始ニコラスの話になってしまったけど、
そんな彼はマネージャーの不正により自己破産寸前の状況だとか

2.0 2010.1.17

ファニーゲームU.S.A.

理不尽な暴力殺人ゲーム映画のリメイク版。とにかく終始二人の青年の変態ぶりにイライラする(特に借りた卵を何度も落とすシーン)。この手の映画、最後には犯人が殺されて「あーすっきりした」で終わるのが普通だが、全く希望を見いだせない、後味の悪いエンディングが待っている。終盤、犯人の一人がショットガンで殺される。ハッピーエンドに向かうんだろうかと思ったところで、もう一人の犯人がカメラ目線で「筋書きと違う」と言いリモコンの巻き戻しボタンを押す。場面はショットガンが撃たれる前にタイムスリップし、犯人が殺されないもう一つの世界が展開していく。これは救いようのない絶望感を演出する狙いだろうか。個人的にはこのメタ要素でいっきに没入していた感覚が吹っ飛び所詮つくられた映画だからという気分になった。
それでも、あそこまでイラつかせるのは作者の思惑だろうし、冒頭のクラシックからいきなりデスメタルに切り替わる唐突ぶり、そしてナオミワッツの身体をはった演技はすごい。

★2.5 2010.1.3

2010年1月6日水曜日

ダウト

ストシーンのメリルストリープの嗚咽まじりの号泣が怖かった。「神に仕える者なのに、人を信じることができない。」そんな自分が許せないという独白だったと思うが、突然のことで呆気にとられた。そしてこのシーンは「この映画は純然なサスペンスでない」ということを提示しており、逆に釈然としない気持ちになった。
物語は、閉鎖的な神学校を舞台に展開される。古くからの規律を重んじ支配的に学校を統率しようとする校長と生徒への思いやりを根底に社会に開かれた新たな教会像を実現しようとする革新派の牧師。この構造はキリスト教のカソリックとプロテスタントの対立を喩えているものだろうか。その間で純粋に子ども達に愛情を注ぐ女性教師。
校長はこの牧師を忌み嫌っている。あることがきっかけで牧師が子どもたちに性的関係を強要しているという疑惑を持ち始める。校長は疑惑を確証するために、さんざん嘘をつきえぐい手をつかいながら牧師を失脚させようとする。校長室での二人の激論シーンは圧倒的な迫力。



3 2010.1.5

ザ・バンク

巨大銀行の陰謀を暴く捜査官の追跡劇を描いたアクションサスペンスもの。
ストーリーはごくごく普通であまり心に残らないが、各国の街並みの美しさが印象的だった。あまり色々な国に行ったり、突然シーンが変わるので断片的に詰め込んでいる感が最後まで拭えなかった。
終盤のフランクロイドライトのグッゲンハイム美術館での銃撃戦シーンはなかなかの迫力。どうやって撮影したのか気になった。悪事を働いていた銀行の幹部が最後に殺されるが、その後、新たな幹部就任後、逆に銀行が急成長していくエピローグはむなしさだけを残す。

2.5 2009.12.30

パニッシャー : ウォー・ゾーン

マフィアに妻子を殺された男が復讐鬼パニッシャーと化してマフィアを殺しまくる話。前半の惨殺劇の中で、主人公は誤って潜入捜査していたFBIを殺害してしまう。同時に、顔が命の極悪非道な幹部を殺し損ねてしまう、しかも顔をズタズタにした状態で。当然その幹部はパニッシャーに復讐するために街のごろつきを集めたり、超変態な弟を精神病院から連れ出す。また、殺されたFBIに預けていた金を回収するために残された若い妻と小さな娘を人質にとる。パニッシャーはこの親子に殺された自分の妻子を重ねており怒りは頂点に。単独で決戦の地へ乗り込む。といったわかりやすいストーリー。
全体的に人体欠損などのゴア表現が必要以上に過激で笑える。シンプルなストーリーでかつアクション部分もそれなりに迫力があるので気楽に楽しむことができる。
ちなみにド変態な弟役は、グリーンマイルでダメダメな看守役だった人。いい演技してる、ボスより存在感あり。

★3 
2009.12.31

2rooms

浮気している妻。その浮気に気づく夫。浮気相手は夫の親友。
設定はありがちだが、プロット展開が面白い。
妻は出張を装って一晩まちのホテルの一室をとりそこに浮気相手を呼び出す。以前から妻の行動に疑惑の念を抱いていた夫は妻を尾行し、浮気の事実を確信する。夫は、ホテルのポーターを騙くらかし、妻が宿泊している部屋507号の向かいの部屋508号を借り、妻の相手を突き止めるため覗き穴から監視を始める。そして、妻とその浮気相手を殺すことを決心し、親友に自白の電話をする。その親友が向かいの部屋にいることを知らずに。親友は、廊下の向こうから監視されている最悪の状況から逃げ出すために手を尽くし何とか脱出。今来たような顔で客室に戻った時には既に妻は殺され、さらに見ず知らずの男が濡れ衣を着せられ拘束されていた。
夫は親友の助言で自首すると言い残し部屋を後にする。親友はホテルの部屋に忘れてしまっていた自分の携帯に残されたメッセージを発見する。そして全て仕組まれた罠であることを知ることとなる。プチどんでん返しがなかなか心地良い。

妻役のブリタニー・マーフィーは20091220日に32歳の若さで亡くなった。

★3 2010.1.2

to 楕円軌道

近未来ジャパニーズアニメもの。50分の作品なので重厚な物語を期待してはいなかったが、予想以上にペラペラ。意図的だとは思うがフルCGで描かれる人物にも活き活きした表情が全くなくロボットが登場する紙芝居を観ているような感覚。やっぱりアキラみたいに緻密な手描きだからこそうまれる魅力があるんだと再確認。物語自体も地球環境破壊、人種差別社会を背景にしているが説明不足で深みがない。

ストーリーは、近未来の宇宙ステーションを舞台に展開するテロもの。地球の資源は枯渇し、他の惑星から採取する液体プロトン?が頼みの綱になっている。数トンで10年間の地球上の全ての電力を賄えるという設定。これを使い月基地爆破を企てるテロリストをわけありの宇宙ステーション館長と民間シップ女船長が阻止しようとする。終盤の銃撃戦も貧相。

1.5 2009.12.30

マーリー

物書きを生業にしている新婚の夫婦が新天地カリフォルニアに引っ越し、子育ての予行練習のつもりで子犬マーリーを飼う。この犬がどうしようもない馬鹿な犬で、珍騒動を次々と引き起こす。クッションの類は油断すると全て中の綿が剥き出しにされるし、旦那が妻に贈ったネックレスを丸飲みしてしまう。やんちゃが過ぎて時にはストレスにもなるが、次第に家族の一員としてかけがえのない存在になっていく。よくある子どもと犬のふれあいではなく、夫婦愛をテーマに深く掘り下げている点が物語を厚みのあるものにしている。

妻(ブラピのもと奥さん)はコラムニストとして才能があり、旦那はその才能に嫉妬している。だから、あくまで記者として生きていこうとするが、ちょっとしたきっかけでマーリーが引き起こす日々の事件を題材に新聞にコラムを掲載することになる。それが読者にも会社の社長にも受けて周りからは純粋なコラムニストでありつづけることを要求される。でもやはりリアルな現場を伝える記者の道を捨てきない。自分の力を試したく、新たな職を探そうとするがその矢先に子どもが出来てしまう。子育てが夫婦の時間を奪い、二人の間に距離をつくりはじめる。微妙な距離を感じながらも、夫婦はお互いを思いやり、3人の子どもを授かることになる。子育てとマーリーのやんちゃに疲れ切っても旦那のチャレンジを後押しする奥さんも立派。

映画としてこういった家族・夫婦の微妙な心の動きを丁寧に描いているので「犬出せば感動するよ」的な先入観は良い意味で裏切られた。マイドッグスキップは泣かなかったけど、これは泣けました。

マーリーはたまたま車でかかっていたボブマーリーからとられた名だが、うちで飼っていたジェットも帰り道にあったパチンコ屋から名付けたことを思い出した。
★3 2009.12.30