パンズ・ラビリンスのギレルモ・デル・トロ製作、ホラーファンタジー。ホラーと書いたけど、所謂ホラーではなく、ダークな雰囲気をそう表現したい。実際、何カ所か声が出るくらいびびってしまうシーンがあるし、その部分だけみるとそこらのホラーよりコワイ。でも、ベースにあるのは、親子の深い愛情物語。
何より映像がきれい。パンズ・ラビリンスが予想外に良かったのは独特の映像美によるところが大きいし、この作品もそこがまず評価されるところだろう。光と闇の独特な表現、何より素材としてスペインのまち・建物・風景そのものが美しい。
子どもの頃海辺の孤児院で育った主人公の女性は、今では使われなくなっているその建物を買い、旦那と一緒に、障がいを持つ子ども達のホームとして再生しようとしている。夫婦には、一人の息子がいる。彼は養子である。そして、生まれながらHIVウイルスを持つ悲しい運命にある。(この伏線は個人的には十分に回収できなかった)
引っ越して間もなく、息子は空想上の見えない友達と遊ぶようになる。6人の友達の存在をリアルに語り、遊びがエスカレートしていく様子に、夫婦は不安を募らせるが幼い子どもによくある遊びと解釈してやり過ごす。
ホームのオープン当日、「友達の部屋をみてほしい」という言葉を残し息子が失踪する。警察を巻き込んでの必死の捜索を行うが、手がかりがみつからないまま半年が過ぎる。その頃から、建物内で目に見えない何かの存在を感じるようになる。警察の捜査に失望した妻は、オカルトの専門家にお願いし、霊界とコンタクトをとろうとする。そして6つの白骨化した遺体を見つける。息子はどこにいるのか?ラスト、自分のとった行動が息子を暗い闇に閉じこめてしまったことを知るシーンは切ない。
エピローグのカットは完全に蛇足。あえて説明的に墓標はみせずに、そこは鑑賞者の想像力に委ねてほしかった。
2010.4.11★3.0