2010年5月6日木曜日

奇術師フーディーニ

1900年代初頭に実在したハンガリー人の奇術師フーディーニを題材にした映画。彼は手足を拘束された状態で浸かった水槽から脱出するというマジックで世の中を魅了する。そんな彼が、絶頂期に科学との挑戦と銘打ち世間に一つの挑戦状をたたきつける。自分しか知らない母親の遺言を言い当てたものに1万$の賞金を出すと言う。
この挑戦に引き寄せられたのがイカサマ女霊媒師とその娘。1万$欲しさにフーディーニに近づき、何とか遺言のヒントを得ようとするが、次第に恋心を抱くようになる。フーディーニもたくましく生きる女に心惹かれ妻がいながらもその禁断の恋に落ちていく。このあたりの心の動きはあまり丁寧に描かれていないと思った。実際、フーディーニは仕事で母親の最後を看取ることができずに、罪の意識を感じていた。遺言当てのゲームも科学と霊力の対決ではなく、単純に母親とコンタクトしたいのが本音だった。母親の面影を女霊媒師に重ねていた。それが強い愛情に移り変わっていく部分には飛躍を感じざるを得ない。
終盤、暗視公開実験の中で娘が神懸りになり、母親の言葉が語られる。フーディーニはこの中にあった「赤い悪魔」によって殺されることになるが、現実でも同じように「腹部を殴られても平気という芸」の際、準備する前に殴られて急性虫垂炎で死んだらしい。(実際には赤ではなく白だったらしい)
wikiで調べてみると実際のフーディーニの写真があって、マッチョで髪がちりちり。ガイピアーズはしっかり役作りしている。キャサリンゼタジョーンズも41歳とは思えぬキュートさ。
2010.5.5★2.5

海辺の家

泣ける映画として評価の高い映画。確かに不良少年が次第に家族に心を開いていくストーリーと父親との熱いやり取り、離婚したけどやっぱりお互いを忘れられない夫婦の愛情が豊かにわかりやすく描かれている。父親が息子と妻に自分の余命を伝えるシーンは全員素晴らしい演技。それと、脇役の隣人達が良い味出している。隣に住んでいる独り身の熟女の娘の友人との情事。この物語には別に必要ないと感じたが、その罪の意識から家造りに男手を出させる部分につながる伏線なのか(多分その男達はこの熟女と関係した人たちだろう)。どちらにしてもあまり必要ない。息子も毎日隣家の娘と一緒にシャワーをあびたり、近所に少年趣味の男がいたり、何か性に対して自由すぎる人たちにあふれている。
海辺のボロ家に住む中年男。建築事務所で働く彼はCG時代に着いていこうとせず、ひたすら模型をつくることしかしないため、とうとうリストラされる。ムカツク会社の上司に解雇を宣告され、社内の模型をぼこぼこにぶち壊した直後、彼は路上に倒れ病院に運び込まれる。そして医者から余命4ヶ月を宣告される。
彼は残された時間でボロ家を建て替えることを決意し、その作業を通じて一人息子と大切な何かを共有しようとする。離婚した妻のもとにいた息子は、新しい父親とそりがあうわけがなく、ぐれにぐれ放題。シンナー、ドラッグ、売春、顎にピアス、紫の髪、大音量のメタルと手が着けられない状態だが、父親との時間により次第に自分を取り戻していく。
命の灯火が消えようとしている病床から、イルミネーションされた海辺の家を観るシーンは感動的。息子への最後の言葉は「ありがとう」とかではなく、「完成させろ。」だった。
2010.5.2★3.5

ダイアナの選択

またこのオチか。死ぬ間際にみる走馬燈の中で描いた未来の人生をあたかもその後の人生として描きミスリードしていくもの。観終わって考えてみると確かに●年後みたいな字幕はなかったなぁ。この手法、もはやどんでん返し系の常套手段でミステリサスペンス好きなら中盤でだいたい気づいてしまうだろう。自分は旦那が講演会で観た教授だとわかった時に気づいた。
何をやるのにも無気力でつき合う男もシャブ中毒といった問題児のダイアナ、毎週欠かさず教会に通い結婚するまで貞操を守る真面目なモーリーン。ある日二人の女子高生が高校のトイレでたわいもない会話をしていると、教室の方から銃声と悲鳴が聞こえてくる。そこへ次々とクラスメイトを撃ち殺した同級生(いかにもアメリカのオタク的な)が登場。男はどちらか一人を殺すと言う。ダイアナとモーリーンにどちらを殺すか選択を迫る。
ここで場面は切り替わりダイアナの大人の物語がスタートする。観ている者はあたかもダイアナがこの事件の生存者として心にトラウマを抱えてながら生きているというストーリーを疑うことなく受け入れるだろう。ダイアナとモーリーンの高校時代の思い出と現在の家族生活、そして犯人が選択を迫ったシーンが入り乱れながら謎を深めていく構成だが、先にも書いたように中盤でオチに気づく。結局何が言いたかったのか、メッセージは伝わってこないが、映画として丁寧につくってあるしプロットもしっかりしているのでつまらないことはない。
2010.5.5★2.5

グエムル漢江の怪物

韓国発モンスターパニックムービー。というのはメディアがつくりだしたプロモーションイメージで実際には家族愛と抑圧政治を風刺したシンプルなヒューマンドラマ。武装した兵士がグロい生き物と戦うただのモンスターものとは全く別物。CMのうさんくさいモンスターの造形を観て敬遠していたが殺人の追憶のポン・ジュノ監督作品だということを知り借りた。
とにかく、「チェイサー」でも思ったが韓国人の演技は熱すぎる。やりすぎ。本気なのかふざげているのかわからないところもあり、笑いをさそう。これは日本人にはない感覚だなぁ。ソンガンホは相変わらず凄い演技力でダメ親父ぶり、娘の名前を連呼しながら号泣するシーン、見所満載。
ベトナム戦争のアメリカの枯れ葉剤「エージェント・オレンジ」を風刺した「エージェント・イエロー」。この生物兵器によりグエムルは弱るが、近くにいた人間はぴんぴんしているのが腑に落ちない。
2010.5.3★2.5

レイクビューテラス

サミュエルLジャクソンが変質的な隣人を演じるいらいら系サスペンス。
若い夫婦が丘の上の閑静な住宅街に新居を購入。隣家には黒人警官と二人の娘が住んでいる。この黒人警官が次から次へと若夫婦へ嫌がらせを連発。窓を煌々と照らすセキュリティライト、はみ出した植木の伐採、タイヤ釘さし、深夜のどんちゃん騒ぎ。。。白人・黒人夫婦であることを人に関する人種差別発言。。
しまいには、町のごろつきを使って、空き巣を企てる。自分の家でパーティを企画し、そこへ夫婦を呼ぶ。その間ごろつきが好き放題家の中を荒らすという段取りだったが、予想外に妻が一人早く帰宅し、物色中のごろつきと鉢合わせ、悲鳴をあげる。黒人警官は真っ先に現場へ向かい、自分の企てを隠すためそのごろつきをその場で射殺。警官はヒーロー扱いとなるが、現場に落とされたごろつきの携帯履歴から事の真相が明らかになる。。。
黒人警官の妻は2年前に交通事故にあい、病院に運び込まれ、治療を受けることなくストレッチャーの上で死んだ。前半、この事実のみを明らかにすることで黒人差別社会を背景とした問題を示唆させるが、後半交通事故にあった妻は会社の白人男性と車に乗っていたことがわかる、不自然な時間帯に。本当の理由は、妻の浮気を許せなかったということ。。。
良作とは言えないがサミュエルLジャクソンの演技は上手く、いらいら感はかなりのもの。
2010.5.1★2.5

天使と悪魔

最近観たハリウッド系大作映画の中ではエンターテイメント性に優れている良作。殺人予告時間までのタイムリミットを設定することで臨場感を増している。
あらすじ→ローマ教皇が死去→次期教皇を選ぶ選挙(コンクラーベ)を開こうとする→教皇候補者4名が誘拐される→誘拐犯から殺害及び爆破予告が届く(この爆破予告は先にドイツの研究所で盗まれた膨大なエネルギーを持った反物質)→トムハンクス演じる宗教シンボル学者ロバート博士が事件解決のために捜査に協力することになる。
1時間おきの殺害リミットを追いかけながら犯人の示したヒントを手がかりにヴァチカン市国・ローマ市内をかけまわる。謎解きのテンポが良くぐいぐいひきこまれる。
で、事件の背後には、過去にキリスト教に迫害された秘密の科学結社・イルミナティが存在しており、歴史を引きずった宗教的策略が見え隠れして謎を深めていく。
いかにも悪そうなスイス警察の人間が殺され、市民の絶大な人気を得た教皇侍従が次期教皇に推薦される流れにほっとしたところでどんでん返し。冒頭のシーンを思い返せば当然なんだけど、ミステリーとしてパンチは十分きいている。
2010.5.1★3.5