2010年1月20日水曜日

題名のない子守唄

ニュー・シネマ・パラダイスのジュゼッペ・トルナトーレ監督作品。これは本当に素晴らしい映画。特に切ないエンディングシーンは感動的、心にずしっとくる。主人公がみせる表情、余韻を残す潔い幕の引き方、場面、構図、完璧。予定調和かもしれないけど美しいものは美しい。
物語は、ウクライナの売春を背景にミステリアスに構成されている。冒頭、ジャケットからは想像もできないぼかし全開のショッキングなシーンに始まり、いっさい説明がないまま、主人公の女性イレーナのイタリアでのストーリーがはじまる。所々に過去の壮絶な売春時代のシーンがカットインされ謎をちりばめながらも、徐々にイレーナの行動の意味を理解することとなる。
イレーナは、売春と里子を斡旋する極悪なシステムに組み込まれた女性。強制的に産まされた子どもは自動的に子どもを欲しがる親へ引き渡され、そして次の子どもを産むためにまた売春を強要される。イレーナは目を盗んで呪縛から逃亡することに成功するがその時感じたのは強い母性。最後に産んだ子どもにどうしても会いたくなり、何とか子どもの居場所を突きとめ、一家が住むマンションの向かいに部屋を借りる。存在を確認するだけでは足らず、もっと子どもに近づくために手を尽くしその家の家政婦になる。自分が本当の親であることをひた隠し、愛情を注ぐ。生まれつき自己防衛力が弱い子どもをスパルタ的に訓練するシーン、、いじめっ子にやり返す子どもを陰から見守るシーン、イレーナの演技は素晴らしい。
後半、物語は急展開する。ウクライナで拷問とも言える売春を強要した悪魔のような男が登場。その男はイレーナが逃げ出した際に持ち出した大金を奪い返しに来た。男は猶予を与えながらも彼女の周りから全てを奪うために、里親の女性を事故に見せかけ殺す。当然イレーナに殺人の容疑がかけられる。本当の母親になりたいイレーナの心境を考えると殺しの動機は十分。そして、イレーナは、男を殺し、埋める。
全てが明るみになり、イレーナは犯罪者として警察に捕まり、愛する子どもとの別離を余儀なくされる。そして、驚愕の真相を知る。この絶望の闇があるからこそ、刑期を終えたバス停でのシーンがふるえるほどに感動的。
この映画GEOには一本しか置いていない。ウォッチメン、何十本も入れてる場合じゃねーよ。

★4.5 2010.1.10

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